私が初めてGACKTを強く意識したのは、テレビから流れてくる彼のあるホールでの歌とその歌う姿だった。
それまで彼の名前だけは知っていたが、珍しい名前だなと思うくらいでほとんど興味がなかった。
その日視聴した彼の歌は私にこの言葉を強く意識させた。ROCKERという言葉だ。
彼の音楽に深いグルーブを感じた。彼の体の動きに情熱を感じた。その日から彼の存在に興味を持つようになった。
ある番組で彼は彼が中心となっていたバンドの解散の経緯をストレートに語っていた。
人気が出てお金を得る、その途端にメンバーの音楽への情熱が冷めていくのを感じ解散へと流れていったことを包み隠さず語った。
彼にはどんな状況でも表現への情熱があった。一見奇をてらっているように見える彼の誠実さを私は感じた。
彼はCDシングル46枚、アルバム19枚を製作している。
多作というより彼の長い、表現者としての歴史を感じさせる数字だ。
ソロアーティストとしては男性では2016年夏現在で、 シングルでのトップテンに入った枚数は、数あるミュージシャンの中で歴代1位であり続けている。
彼がクリエーティブなアーティストであると感じさせるのは、音楽のジャンルにとどまることのない視覚的映像表現、パフォーマンスの要素、そして音楽、これらを融合させたステージを構成していることは象徴的である。
このことは彼の中の表現欲求の幅の広さであり、視聴する人を楽しませる表現者ともいえるのではないだろうか。
彼の個性的表現、存在感は彼が獲得している感覚的な多くの要素と無縁とは思えない。五か国語を使え、伝統的な武術にも長け、スポーツも楽しむ。
彼の悠然とした様子はこのような彼の奥深さにも関係しているように思える。
一見ナルシスティックに見えるが、私には一つの彼の演出に思える。
ナルシストは人へのサービスはしない。
GACKTもしそうであれば、彼の音楽をはじめとする表現をこれだけの人が喜ぶはずがない。
人に楽しみをという、その思いがなければ長い期間、多くの人を惹きつけることはできないであろう。その意味では広義のエンターテナーと彼を呼んでもよさそうだ。