ブランキー・ジェットシティは暴力的だという人はどのような点が暴力的だと思っているのか知りたいと思う。

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かつて多くのファンを獲得していた深夜のテレビ番組に「イカ天」(いかすバンド天国)がある。

アマチュアのバンドがカメラの前で演奏を披露し審査を受ける。

5回勝ち抜くとグランドイカ天キングとなり、メジャーデビューが約束された。

実に846組のバンドが出演した。「たま」もここからデビューしている。私が最も惹かれたのはブランキー・ジェットシティーである。

3人のタトゥーとボーカル浅井健一の声は独特で強かった。私は彼らがデビューしてリリースしたアルバムを殆ど買って聴いた。

サードアルバムは名曲ぞろいと個人的に思う。「単車乗り」「ガソリンの瓶」などの歌詞が出てくる。彼ら(作詞・作曲はほとんど浅井健一)の曲に「車泥棒」というハードな曲がある。

そこで歌われるのは、車泥棒の動機だ。彼の気持ちを浅井はこう歌う。

子供のころに遊んでいたブロックの塀が破壊された時の気持ちで盗むのだと。これは単純な犯罪者擁護ではない。

一般化された怒りの出どころである。彼の歌の表面を聴くと、無茶苦茶にしてしまえこんな世界はと言葉を投げつける、だが同時に歌われているのは海岸の美しさに象徴されるこの世界の美しさなのだ。

彼の歌は反語的表現であり、その根っこには人間への愛情と私たちを取り巻く自然への深い愛情があるのが分かる。

彼の言葉は問いとして発されることも多い。UAとのコラボ、AJICOの曲の中で歌われる歌の歌詞に「どんなに弱くても美しくなれる」と浅井は歌う。

この歌詞から汲み取れるのは「強いもの」が尊く、弱いことは忌み嫌うべきものという考えへのプロテストともとれる。

このような彼の思いは「暴力的」と呼ばれるものの対極にある。浅井健一はずっと真摯に歌を書き続けている。

彼にとって言いたいことが山ほどあるのだ。解散はしたものの、ドラムス中村達也も、ベーシスト照井利幸も健在である。

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